本年度県政懇談会は、第4回幹事会で各地区勤労協検討の課題を集約し、要望書にまとめ(全文)2月県議会開会を前にした、2月17日に開催された。
要望事項は石川県知事へ提出後、関係各当局と懇談を行った。
●石川嘉延県知事へ要望書を提出、懇談
懇談会に先立ち、県連は第6回幹事会を開催。当日の日程や懇談会の進め方等を決定。11時から知事室で石川知事へ岡本会長から要望書を提出し回答を求めた。その回答内容は次のとおり。
(要望書第1項)雇用対策について回答要旨
1月にようやく失業率が低下、有効求人倍率も1.15倍となり安堵している。若者の就労については、高校における職業教育を充実させたい。地域学卒者の就職は良好になっており、転職が多様化していることにも対応していく。
中高年者の就業支援として職業能力の再訓練を行い、転職、再就職に役立てている。再訓練受講者の再就職率は7割から8割に及んでいる。
外国人労働力は難しい問題がある。最近の企業の動向として少子化にはロボットなど無人化の方向にあるので、すべて受け入れが良いということではない。 少子化に対応して、県内ではトヨタ、キャノンなど定年後65歳まで再雇用す る方向が出ているので、この方向を拡大していきたい
07年問題といって団塊の世代が大量に定年退職することに対応して、若い人に技術を伝承していく企業もあり、県としてもこれに対応していきたい。
(要望書第2項)静岡空港建設に対する回答要旨
国は地方空港への外国航路受け入れを徐々に緩和しつつあり、中部国際空港が開港しても滑走路は一本であり、静岡空港の利用価値は高い。
静岡空港に対しては韓国のアシアナ航空、中国の東方航空、上海航空、ベトナム航空などから引き合いがあり、開港期日が明確になればさらに出ると思う。
国内路線について2009年春の開港時に札幌、福岡、沖縄、鹿児島等を予定 しているが、さらに小型機による関西、成田、松山、高松、広島、熊本など地 域間路線や、貨物便なども含め、有効活用を考えていきたい。
用地の強制収用については、18日〜19日の公聴会を経て5月末までに決定すると思う。地権者との話し合いはこんごも続けていきたい。
空港維持の採算は100万人の利用でとれる。現在の需要予測は106万人だが、小型機の利用や外国路線は別になっており、維持費の5億2千万円は民間への委託経営によって賄う。空港本体建設費は社会資本として整備したものであり、減価償却はしないが借金返済のかたちで償却していく。
(要望書第3項)自然災害対策についての回答要旨
地震や津波が来たら「まず逃げる」ことを原則にして、避難地域を指定して訓練を指導、住民の参加をお願いしている。県は災害時の拠点となる行政庁舎、学校、病院などの建物を耐震化しており、現在までに70%を完了しているが、2011年度までに100%完了したい。
なかでも重要で緊急性の高いものには、09年度完了をめどにしている。地震予知対策については今後も続けていくが、それだけに頼る訳ではない。
(補充質問)
●発表された05年度県予算は、税収が増えているのに政策費が減少しているのは何故か。
●県警や出先機関など県関係職員の不祥事の連続は根絶できないか。
補充質問に対する回答要旨
従来、国の政策関連経費については、地方交付税で補填し行政水準を保ってきたが、方程式が変わって、交付税を減らされレベルアップはできなくなったということである。
現在、過去の経緯の清算を続けている。堀田力さんを委員長に法令順守を監視する委員会を設置して根絶に努めている。県の通達後、新規発生はない。
●県関係当局と参加者による要望事項の懇談
知事との懇談後、各地区勤労協代表も参加して昼食後の13時から、会場を静岡県議会平成21会議室に移して、県関係当局と参加者による要望事項の懇談を行った。その内容は次のとおり。
雇用対策について
景気改善のきざしが見えるとはいえ、なお、リストラや賃金の切り下げなど勤労者の生活不安は高まっています。その一方では不正規社員の増大や、ニートと呼ばれる若者層の増加がみられ、就業支援が複雑化していると考えられます。
また、少子化に歯止めをかけるには、女性の社会進出や、就業のあり方をみつめ、その支援が必要になっていると思われます。さらに、外国人労働者の増加にどのように対応していくか等の問題も出ています。これらの諸問題について、県当局の方針を聞かせていただくとともに、抜本的な雇用対策等の推進などについて、行政の立場から積極的な取り組みを要望します。
質疑応答
(遠藤労働政策室長、大石専門監、望月労働福祉係長)
(雇用推進室、鈴木専門監)
07年には人口減少・高齢社会の到来という、かって経験しなかった時代を迎える。この主たる原因のひとつには、子育て世代を冷遇してきた雇用のあり方にあるように思われる。この機会に子どもを生むことを躊躇する原因を取り除くような、労働のあり方などを模索して行くべきだと考えるがどうか。
平成15年7月次世代対策支援法が施行され、301人以上の一般企業は子育て世代向けの対策行動計画を本年3月末までに届けでることになった。企業の役割は重くなっている。県としては300人以下の企業にも対策を要請して いくと共に、企画部を中心に県庁あげて取り組みをしていきたい。
07年には「団塊の世代」といわれる人達が大量に定年に達し、職場を離れる。60歳定年据え置きの一方で年金開始年齢の引き上げがすすめられ、年金制度の不安定とあいまって高齢者の生活条件は悪化している。65歳までの就業についての考え方と、その支援の方策等について方針があれば聞きたい。
労働力が減少し、高齢者の雇用は不可欠になってきている。65歳までの雇 用延長を基本に取り組んでいる。高齢者雇用の企画を推進しており、就職準備セミナーを開催するなど、再就職希望者のため施策を拡大していく。
「男女雇用均等法」制定から20年、依然、女性に対する身分差別や、子育て後の再就職など厳しい環境にある。また、男性の育児休業取得の状況や問題点等についても県の施策を聞きたい。
育児休業雇用調査は3000社を対象に4年毎行っている。現在とりまとめ 中だがやや向上してきている。結婚、育児を退職理由としている人が20%ある。県が女性役職者のセミナーを行ったところ、育児休業の取得は女性87.3%の高率だったが、男性は0.53%だった。男性の取得がせめて10%になってほしい。
ある企業のシンポで育児休業を取得した男性が「いろいろな体験で人間的な幅が広がった」と述べている。その企業では社員にむけブラス思考をもつよう進めている。今後も経営トップの意識改革が大切だと考えている。
少子・高齢化の進行により、生産労働人口が減少するなかで、80万人といわれる外国人労働者の増加が予想される。本県の対応方針を聞きたい。
国内の雇用問題ともからんで多くの問題があり、専門的、技術的な労働者を受け入れ、単純労働者は慎重になっている。今後、介護労働者やマッサージ師などの受け入れが増加するが、特定施設等への限定的な受け入れになる。
静岡空港建設について
静岡空港の建設状況をお聞かせ願うとともに、無駄な公共投資との批判や、用地の強制収用に反対するなどの県民の声に対して、どのように応えていくかご説明願いたい。また、空港の利活用や、県民空港としての採算の見通しについてもお聞かせください。
質疑応答
(空港建設局、空港企画室、小川主幹)
静岡空港の立地決定から17年、工事着工後7年が経過しているが、現在も用地取得の見通しがたたず、強制収用の申請をせざるを得ないということは、空港に対する県内外の理解が進まず、必要性について疑問の声が尽きないからではないか。あらためて、空港の必要性、有用性をご説明されたい。
静岡県民にとってなくてはならない社会基盤だと考えている。現代は国際化 が進み高速交通体制になっている。これまで東京経由でやってきたが、地方分権の流れもあり、各地方が直接外国と交流する時代になった。全国では100の地方空港のうち22の空港が外国と直接交流しており、このままでは取り残される懸念もある。
用地の強制収用は、国の判断に待つとしても、県民は話し合い解決を望んでいる。土地収用に対する県の姿勢について聞きたい。また、開港を2年延長したがこれ以上の延期はないのか。建設予算の増額等の措置はあるのか。
地方の需要を賄う空港として、09年の開港はどうしても進めたい。未解決の地権者にはご理解をいただけるよう今後も努力していく。これ以上の延期は考えられないが、土地収用手続きの関係や、補助金交付の関係で100%確実というわけではない。建設予算はオーバーしない工夫を続けている。
静岡空港の周辺には成田、羽田、中部、関西と大きな国際空港があり、とりわけ、2月開港の中部国際空港は県西部に近く、県民の利用が高いと考えられる。こうした競合状態の中で開港後の運営・維持は赤字にならないか。
民間に委託して運営会社を設立して対応する。現在、10社でワーキンググループを作り検討している。空港の管理施設も民間化し一体化して運営し、着陸料を極力安くできるよう工夫している。
空港の年間維持費が5億2千万円と聞いているが、県民は赤字になった場合を大変心配している。空港運営を民間委託するとしても、赤字補てんの責任は、
最終的に県へ持ち込まれるのではないか。経営責任の所在を明らかにされたい。
国内106万人ブラス海外32万人の旅客で6億7千万円の収入を予定している。経営責任は運営民間会社にある。
空港利活用のあり方如何では、空港の維持・運営に大きく影響すると思われる。県の需要予測に甘さがあるとの指摘を多く聞くが、旅客輸送の面でも小型機活用の地域間航路の開拓、農産物や工業製品の貨物輸送、観光面での活用、
災害や医療対策等多角的な利活用を考慮するなど、周辺の大空港と同じ土俵での競争でなく、真に静岡県民の役に立つ空港にしていただきたい。このため、空港利活用の総合的なイメージを県民に示し、理解を求めることが必要だ。
航空会社は開港の1年から1年半前に取り組みを始めるので、状況をみながらあらゆる可能性を多角的に探っていきたい。本県は富士山の魅力やマーケット人口などが評価され、海外からも引き合いがきている。
新幹線停車の話はどうなったか。また、静浜、浜松など自衛隊との航空エリアの問題は解決しているか。
現在すぐに運動するというより、建設後に運動をすすめたい。あきらめてはいない。航空エリアの問題は防衛庁、国交省、県の間で調整が合意している。
自然災害について
昨年は国の内外において自然災害が多くみられ、県内においても台風22号の伊豆半島直撃による被害など、県民の自然災害に対する不安感が高まっています。
県の地震を含む自然災害対策を説明願うとともに、自然災害の被災者救済に対し、被災住宅の再建や高齢者対策等の充実を要望します。
質疑応答
(防災局防災政策室若田部主幹、災害対策室小泉主幹)
(健康福祉部企画経理室北詰主幹、都市住宅部建築安全推進室、諏訪主幹、土木防災局、代理望月係長)
阪神淡路大震災から10年、新潟県中越地震など依然として自然災害に対する県民の不安は消えていません。東海、南海、東南海の三つの大地震が同時発 生すると、死者は最悪2万人を越えるという予測もあり、スマトラ沖大地震やインド洋大津波など、発生時の避難対策の重要性を警告していると思われる。
防災に関するハードの部分も大切だが、県民の防災に対する意識改革が求められているように思える。県民の防災意識向上について施策を説明されたい。
東海大地震の場合、120万人の避難を想定して、防災訓練など各事業を推進しているのでご協力をお願いしたい。
県は家屋の耐震強化に向け「TOKAI−ゼロ」制度を設定していいるが、その進行状況とこんごの方針を聞きたい。
昭和56年以前の木造建築を対象に診断を行い、数値が1.0未満の家を1.0.以上に強化するため、1戸当たり30万円を補助してきた。今年度から高齢者、障害者の住宅のなかで、0.7未満の家を対象に1.0に上げるため、従来の30万円を市町村が10万円、県が10万円プラスして50万円まで補助できるようにする。これまでの事業実績は平成14年度254件、同15年度1061件、同16年度1307件、合計2368件になっている。今後の方針として、耐震補強の必要性をさらにご理解いただくため、制度の活用をPRしていくと共に、市町村や民間にむけ、防災研修、学校の防災教育の実施を訴えていきたい。
国の「被災害者住宅再建支援制度」は、支給対象が再建住宅の周辺整備に止まるため、被災者の住宅再建について誤解も生じているとの報道もある。民間の自然災害保険(共済)の普及と合わせ、国の制度改善までの暫定措置として、県レベルでの住宅本体の再建支援を考えててはどうか。
法律では家屋に対して300万円の支給があるが、これは家屋の修繕、解体撤去、土地整備に限定されている。知事会が住宅本体の建築再建に支給するよう働きかけている。本県の場合、昨年10月の台風22号の被害に対し、年収800万円以下の所帯を支援。全壊、半壊の家屋に対し市町村が支給する50万円限度を、22号台風に限って1000万円限度に増やす措置をとった。国の制度は1年以内に検討することになっている。
国土交通省が通常国会へ提出予定とされる水防法改正案では、県の管理する中小河川流域の、洪水被災の恐れのある浸水想定区域を知事が指定する「洪水ハザートマップ」作成が義務づけられるという。水防団員の高齢化もあり、水害時の対応について不安も生じている。消防機関、水防団、NPOなど官・民協働の水防体制を確立するよう要望する。
水防ハザートマップは6月ころまでに施行予定だが、本県の場合、従来から取り組みをしてきている。「水防協力団体」の創設については、市町村が管理者、県は指導という立場になるので連携してやっていきたい。
「地域防災力アンケート」では、静岡県が評価1位と評価されているが、その反面市町村段階ではバラツキがあり、県の指導を強化していただきたい。
市町村の防災力向上には具体的に指導を行っている。地域防災指導員を500名養成し、ボランティア・コーデネーター育成、防災機材の確保、防災施設の耐震化の助成等を実施してきた。市町村合併にも対応している。
その他の質問
富士、焼津、袋井、三島などか地震予知の範囲や有効性、地域防災委員のあり方、津波の場合の避難先等の再質問がだされ、以下の回答があった。
地震予知は24時間モニターで監視している。100%の確信はないが、注意情報、警戒宣言等を運用するなかで、予知体制を確立していきたい。
津波の危険区域については、35市町村が避難計画の指針を出しているので当該市町村に聞いてほしい。県の防災センターへも不明の点を問い合わせてほしい。
平成15年に第3次被害想定区域を明示し図上訓練もやっている。呼ばれれば皆さんのところへ出掛けていって説明する。
東海地震の場合、県外から消防と自衛隊が5万人来る体制ができており、いかに、被害を軽減させるかを基本にしている。皆さんの方も2〜3週間分の食料を常に確保し、避難場所と落ち合う場所を家族に周知する必要がある。
昭和56年以前の家屋の耐震診断は無料で全市町村がやっているので、電話で頼めるから必ずやってほしい。
地震に対しては、家屋を耐震化し、家具を固定することが大切だ。阪神大震災死者の半数は家具の転倒だったと聞いている。
以上の応答の後、県の一層の努力を要請すると共に、各地区勤労協でもできるだけ、災害対策の講習会等を、開催することを申し合わせた。
防災関係のホームページは次の通り。
http://www.pref.shizuoka.jp/bousai/
県政懇談会は以上で終了し、大石副会長の締めくくりのあいさつの後散会した。
●静岡県知事への要望書
静岡県知事 石川嘉延殿
2005年2月17日
静岡県勤労者協議会連合会
会長 岡本信也
県勢の発展と県民福祉向上のため、日夜、奮闘されている貴職に対し、深い敬意と感謝を申し上げます。
また、勤労者協議会の活動に際しては、暖かいご理解とご指導・ご支援を賜り、心より御礼申し上げます。
さて、弊会では、地域における勤労者及び家族の生活向上を図る見地から、以下の通り県政に対する要望事項を取りまとめました。貴職におかれましては、要望事項に対し積極的な取り組みを図っていただきたくお願い申し上げます。
記
1.
景気の改善のきざしが見えるとはいえ、なお、リストラや賃金の切り下げなど勤労者の生活不安は高まっています。その一方では不正規社員の増大や、ニートと呼ばれる若者層の増加がみられ、就業支援が複雑化していると考えられます。
また、少子化に歯止めをかけるには、女姓の社会進出や、就業のあり方をみつめ、その支援が必要になっていると思われます。
さらに、外国人労働者の増加にどのように対応していくか等の問題も出ています。これらの諸問題について、県当局の方針を聞かせていただくとともに、抜本的な雇用対策等の推進などについて、行政の立場から積極的な取り組みを要望します。
2.
静岡空港の建設状況をお聞かせ願うとともに、無駄な公共投資との批判や、用地の強制収用に反対するなどの県民の声に対して、どのように応えていくかご説明願いたい。また、空港の利活用や、県民空港としての採算の見通しについてもお聞かせください。
3.
昨年は国の内外において自然災害が多くみられ、県内においても台風22号の伊豆半島直撃による被害など、県民の自然災害に対する不安感が高まっています。県の地震を含む自然災害対策を説明願うとともに、自然災害の被災者救済に対し、被災住宅の再建や高齢者対策等の充実を要望します。
以上