東部ブロックの各勤労協は、毎年、主催者回り持ちで研修・交流会を開催してきましたが、本年度は、韮山町勤労協の当番で、12月5日(日)14時30分から、伊豆長岡町の姫の湯荘で開催されました。当日は韮山勤労協会長の柳沢秀次韮山町会議員が、勤労者をめぐる情勢や、研修会のテーマを年金問題としたこと等の開会あいさつを行いました。
続いて、島田社会保険事務所業務部次長で自治労県職員組合の志太榛原支部副支部長を努める平田時義氏から「公的年金制度改正」の解説と題する講演を受けました。
平田時義氏は、大要次のように講演しました。
●年金とは、一般的に老齢、障害、死亡等によって、本人、家族の生活の安定が損なうことを防止するために、生活の困窮を社会の責任で互助するのが公的年金制度である。
●社会保険は年金、医療、介護、雇用、労災の5保険がある。
●公的年金制度の歴史は、明治時代の恩給制度に始まり、昭和17年男子労働者を対象に労働者年金保険が発足、その後いくつかの変遷をたどって現在の厚生、共済年金になった。昭和36年には自営業者を対象とした国民年金制度が発足し国民皆年金体制が実現した。また、昭和61年には基礎年金制度が発足し、被用者年金各制度間の調整措置が実施されている。
●公的年金制度の概況について、国民年金、被用者年金の被保険者、適用者数、年金の受給者数、支出の総費用額、積立金の状況などを専門家らしく詳細に説明があった。
今回の制度改定の内容と問題点、年金に対する課税の改悪等の説明があった。
以上の講演に対する若干の質問があり、休憩の後、堀田県勤協連事務局長から「年金改革の論点と私たちの運動」と題して大要次のような講演があった。
堀田県勤協連事務局長の講演要旨
(1)年金問題の背景として、次のような問題がある
●団塊の世代の定年退職突入など高齢化社会の進行と年金受給者急増。
●03年特殊出生率が1.29になるなど人口の少子による負担人口の急減。
●年金は社会保険方式になっているが、国民保険の未納者が40%近い反面、国庫負 担が3分の1から2分の1に増加するなど、社会保険なのか、税金による社会保障なのか性格があいまいになっており、将来が不透明になっている。
●今回の改定ではこうした問題に明快な回答を出さず、当面のつじつま合わせに終始したため、国民の支持が得られていない
(2)年金改革の論点としては次のような課題がある
●年金は所得の再配分なのか、最低限度の生活保障なのか
全額税負担方式か、社会保険方式堅持なのか。若しくはその中間なのか
基礎年金を税金でという案があるが財源として消費税は適当か
保険料とした場合、どこまで負担に耐えられるか
●負担と給付の在り方は、こうした基本的な方針をきめてから立てるべきだ
●1935年生まれの世代は収めた保険料の8.3倍の給付があるのに、85年生まれでは2.3倍しかないなど、世代間の格差をどう抑えるか
●年金の一元化をどのように進めるか
●夫婦別年金など、所帯毎の年金をどのように個人化するか
●国民保険の未納対策、厚生年金適用事業所の把握など保険料収納対策の進め方の是非
●6兆円の赤字が出ている積立金の運用は、08年以降自主運用になって大丈夫か
●日本の年金は、現役世代が受益者世代の年金額を負担するという賦課方式だが、自分の年金を自分が積み立てるという積立て方式に切り替えて、現役世代の年金に対する認識を高めるべきではないか
(3)年金問題にたいする勤労協活動
●本来あるべき年金改革の基本は何か
第1 法の下に平等でなければならない。職業や身分で差別があってはならない。
第2 財源は消費税ではない「税法式」が必要。(20歳から60歳までの新税)
第3 給付の抑制を安易に行うべきではない
●勤労協は具体的に以下の活動をすすめたい。
・年金問題をめぐる研修では、社会情勢や財政問題など背景も含めて勉強したい。
・制度の改善には年金の一元化が必要かと考えられるが、基礎年金の一元化に必要な
●財源をどこに求めていくかの議論が必要。
・行政当局との懇談会では勤労者サイドの意見を反映していく。
・年金問題は、保険料の支払い者(現役)と受給者(OB)。制度別の各年金加入者相互間の利害関係が相違する問題もあり、勤労者間での意志疎通が必要である。
研修会は17時に講演を終わり、夕食交流会を行った。第2日目は各勤労協から活動報告と今後の取組みについて報告があり、交流討議を行い、11時すぎに解散した。